甲子夜話 三篇 35巻-12 速飯、急糞、迅走
世の諺に、士(さむらい)は、速飯(はやめし)、急屎(はやぐそ)、迅歩(はやばしり)と云うが、いかにもさも有るべし。
予が躬(みずから:自ら)のうえにて云はんに、蚤(早)くより歯が落ちたれば、喫食速くならず。遅々時を移す(遅々として進まない)。
また痔を患ふれば、厠(かわや)に往(ゆき)ても在ること長し。
また歩行も、その疾(はやさ)をもって迅(迅速)なること能(あた)わず(できない)。
これらは泰平の今、憂うともせず。されども日時に、遠祖公 法印殿(初代平戸藩主)の朝鮮在陣の記事を観るに、いかなれば七年の間、克(よく)も(克己して)月日を過ごし給いし。羨ましくも、慕わしくも、渇仰(かつごう:仰ぎ慕う)の念は絶えず。
また彼の三条のことは、故武、加藤清正が云いしことも有りと聞く。何の書にか載りたる、今知るに由(いわれ:由来)なし。
また就かぬことなれど、小笠原逸阿〔当時の歌人〕が、小川町に往(ゆき)し頃、隣宅が失火せしこと有り。そのときの口ぐさみに、
隣なりける家より火いでて、
栖(す:巣)を走りのがるるとて、
逸阿
飛ぶ火のの野焼けふりの風さきに、かくろひ(隠れ)かねてたつ雉子(きじ)哉(や)。
松浦静山のボキャブラリーが際立っています
早いという漢字がいくつ出てくるか?
探すだけでも、楽しい・・
予が躬(みずから:自ら)のうえにて云はんに、蚤(早)くより歯が落ちたれば、喫食速くならず。遅々時を移す(遅々として進まない)。
また痔を患ふれば、厠(かわや)に往(ゆき)ても在ること長し。
また歩行も、その疾(はやさ)をもって迅(迅速)なること能(あた)わず(できない)。
これらは泰平の今、憂うともせず。されども日時に、遠祖公 法印殿(初代平戸藩主)の朝鮮在陣の記事を観るに、いかなれば七年の間、克(よく)も(克己して)月日を過ごし給いし。羨ましくも、慕わしくも、渇仰(かつごう:仰ぎ慕う)の念は絶えず。
また彼の三条のことは、故武、加藤清正が云いしことも有りと聞く。何の書にか載りたる、今知るに由(いわれ:由来)なし。
また就かぬことなれど、小笠原逸阿〔当時の歌人〕が、小川町に往(ゆき)し頃、隣宅が失火せしこと有り。そのときの口ぐさみに、
隣なりける家より火いでて、
栖(す:巣)を走りのがるるとて、
逸阿
飛ぶ火のの野焼けふりの風さきに、かくろひ(隠れ)かねてたつ雉子(きじ)哉(や)。
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